「魔法のコンパス 道なき道の歩き方 」を読んで考えたこと
「魔法のコンパス 道なき道の歩き方 」は、「えんとつ町のプペル」などの絵本を描かれている、お笑い芸人のキングコングの西野 亮廣さんのビジネス書です。
この本を読もうと思ったきっかけは、私は、学生のとき絵本やイラストの道へ進むことを夢見ていた時期があったのですが、社会人になった今も「必要でないもの(たとえば絵本などの娯楽)」の購買意欲がどこから来るのかとても興味があったことと、絵本作家の方で「モノを売る」ことについて興味がある方ってなかなかいないと思うので貴重だなあと思ったことです。
この本には、23万部絵本を売られた西野 亮廣さんが、どのように絵本に価値をつけて、どのように考えて行動して売られているのか書いてあります。
印象に残った「必要でないモノを必要なモノにする」という言葉
私が就職活動していたときに、就職面接の問題で「面接官にこの水を買いたいと思わせてください」という出題をされるお話を聞いたことがあります。つまり「水を必要なモノにする」という課題です。この問題の正解の1つは「面接官を走らせて喉を乾かせ、水を欲しいと思わせる」です。もしかしたら他にも答えはあるかもしれません。
この書籍では、水ではなく絵本を「必要なモノ」にする方法を考えられていました。書籍で紹介されている方法は、思い出となる「体験」をつくり、作品を「思い出化」し、絵本を展覧会の思い出として買ってもらうという考えでした。私はいままで「絵本=娯楽」で、絵本は「親が読ませたい・子供が読みたいと思ったから買う」だと思っていました。発想自体おもしろいなあとおもったのですが、とくに面白いのは、まったく絵本とは無縁の「おみやげ」から発想が来ていることです。きっと普段から考えられていたんだなあという背景を想像すると、自分が関わっているものを必要なモノにするためにはどんな体験が必要か考えさせられます。
さらに、展覧会で使われた原画のリース料は無料にされていて、展覧会開催費用もクラウドファンディングで募集し、主催者は本人ではなく各地方の方々が行われていたりもします。展覧会なんてクリエイターからすると夢のようなことな気がしますが、著者からすると、展覧会を開催することが目的ではなく、あくまで絵本を売るための道具なんだなあと感じました。
この本ではそんな著者の面白い発想が各所に詰まっています。読んでいくと次はどんな発想で成功させたんだろう、とわくわくしながら読めます。
一見、生活に必要でないものに見える娯楽でも、こちらの提示の仕方で「必要なモノ」にできるというのはこの書籍を読んだ中でも一番の発見でした。
書籍を読んで感じた課題
課題に感じている点は、書籍にも書かれている以下の点です。
今、時代は体験を求めていて、僕はライブや個展といった「体験」を頻繁に仕掛けるので、そういった運動の落とし所を作品にする場合、「おみやげ」になりにくい作品には興味がない。
僕にとっては本が"物質"であることに大きな意味があるんだよね。
あくまで存在しているモノだけがおみやげになれます。実物が存在しないLINEスタンプやシステムなどは思い出としておみやげにするには難しそうです。
絵本の場合は、展覧会のおみやげにすることでした。じゃあLINEスタンプやイラストはどんな風に必要だと思ってもらえるだろう。会社で関わってるシステムだったらどんなことができるだろう。どんなふうに体験してもらえるだろう。そんな考えが書籍を読んだ後でも残っていて、今後の課題にしたいなと思いました。